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施設長コラム

言葉によらざるを得ないもどかしさ

人は生まれた直後から言葉の洪水にさらされています。

もの心つく以前に日常会話に必要な言葉はほとんど挿入されており、
自我が生じるころには話し言葉に不自由することはなくなっています。
したがって、人間的思考は否応なしに言葉を使用せざるを得ません。

裏返せば、言葉のない思考過程は知ることができず、「言葉を用いない」あるいは「言葉を越えた」段階に
どれだけ高い精神活動があるかを知ることは永久にできないことになります。

多くの先人の哲学的叡智は言葉を用いて、あるいは言葉があればこそ培われたと考えますが、
それらの殆んど全ての著書は凡人にはとても理解不可能な難解なものばかりです。
人格向上が得られることを期待して読む境地は、
理解できないほうが“有難み”が大きいものと納得すべきなのでしょうか。

この方面の追求はひとまず脇において、日常の身近な出来事や気持ちを伝えようとしたときにも、
しばしば「どう表現したら良いか判らない」あるいは「言葉では言い表せない」という思いに遭遇します。
それは的確に表現する言葉がもともと無いのか、その言葉を知らないのか。

いずれにしても、言葉なしでは生きられないにもかかわらず、
思考においても、伝達においても不十分な方法であることを認めざるを得ません。

遠い将来、さらに進化した人類は電波ならぬ“考波”あるいは“心波”によって
意思疎通ができるようになるのでしょうか。
また、人種を超えた意思伝達方法【エスペラント語】が定着するでしょうか。

ともあれ、安らぎを与え、幸福にし、永遠の絆を結ぶことができるのも言葉なのですから、
自分の真意を正確に伝えられるように日々心掛けたいと思います。


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