ものの良し悪しを判断するとき、あるいは好き嫌いを考えるときに、自分は何を基準に選んでいるのか。
何時からそう考えるようになったのか。長年その基準が形成される過程を探していましたが、いくら自
問してみても把握できませんでした。また、これまで何度か「人には人それぞれの道があり、人には人
それぞれの考えがある。」という先人の言葉を伝えてきましたが、この考えが真理であると確信したのは、
ごく身近で単純な機会を通してでした。しかも、同時に判断基準の形成の始まりと思われ、それは先天
要因と後天要因の撚り合わせによってもたらされると確信しました。生後一ヶ月もすると、赤ん坊は母乳
と人工乳の違いを知って、どちらが好きかを示すようになります。但し、乳首の感触によるのか、乳汁そ
のものの味によるのかの判別は定かではありませんでした。そして、間もなく母親の声を聞き分け、抱
かれれば眠るのに、布団に入れると目覚めて泣き出すようになります。知覚や感覚の”快・不快”による
反応と思われますが、この感覚を基にした嗜好の集積が、やがて感情や思考の基準に発展してゆくも
のと考えられます。”オムツ交換のタイミングの適・不適が人格形成に影響する”と言った方がありますが、
充分に頷ける論理です。別の角度から見ますと、空腹やオムツが濡れて不快だと訴える際の姿にも子供
によって大きな差があります。相当お腹が空いているはずなのに、泣かずに眠ったり、にこにこしたりして
いる児。唇に触れるものに吸いつこうと口を開けて探しながらも、しばらくは温和しくしている児。
時問になると突然火のついたように泣き出す児。どこか痛むところでもあるのかと探しても異常なく、乳首
を含ませるとがつがつと飲み、終われば何事も無かったように眠りだす”ギャングベビー”。この姿の差こそ
は”もって生まれた性格”であり、その上に前に述べた嗜好が積み重なって好き嫌いあるいは良し悪しの
基準を形成してゆくものと考えました。
そして、もう一つの大きな特徴は”彼らには内なる欲求に対する抑制力がない”ということです。
この自制心の形成はもっぱら周囲の人間、主として親に課せられた大きな課題であり、重大な責任であります。
やがて、湧き上がる要求と与えられた抑制力のバランスが所謂”人格”として表れることになります。
“三っ子の魂百まで”という真理とあわせ考えると、人の親になるためには、子供を持つ機会が生じる前に
それなりの覚悟と修養が必要なようです。吾は全くの手遅れですが、これから子育てを計画されている方、
“子供とはいかなる性質と可能性を持った生きものか”という勉強をし、充分に精神的準備をしてから、
次の世代を育成してくださるよう切に願いあげます。
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