精巧且つ半永久的“人間アーム”

以前、身体の仕組みの不思議さについていくつか書きました。
見慣れていて当然として過ごしている形状や機能が、改めて見直してみると、全て不思議であり、
ほとんどの部分が”オーバーホール”なしで80～90年間使用可能なことは正に神業です。
“手”についてもしかり、その複雑な動きは、肩・肘・手関節に加えて、親指は3個、
他の4指は4個の骨と関節によって成り立っています。
そればかりではなく、手根部は”ひねり”や”ねじれ”にも対応できるようにジグソーパズルの如く
並べられた8個の石ころ状の骨からなる関節を形成しています。個々の関節の屈曲、伸展および
回転運動に筋や腱が関わっているのは当然ですが、神経、血管それに皮膚なども関節運動に
支障をきたすことなく伸縮するようにできています。
手はさらに、長軸方向の”引き伸ばし”にも”圧力”にも応じられ、また、手のひらに載せてかなりの
精度の計量も可能です。

その道の”匠”と称される人々の技は全て指先の感触で創り出されたものです。
私たちでも、滑らかな板の上に付いている髪の毛を指で探すことができます。
サッカー以外のあらゆるスポーツは鍛えられた”手”が主役あるいは重要な脇役を演じています。

手は言葉もしゃべります。”手話”は意図的約束によって創出されたものですが、
昔の仏像や彫刻の手指は目に次いで多くのことを語りかけており、歌舞伎や舞踊の手指は誘惑に満ちています。
そして、合掌は身体の他の部分がどんな状態であっても”祈り中”であることを示しています。
年々人工知能あるいはロボットが発達していますが、この大きさと重量で、これだけ多機能な
“手”を作り出すことは永遠に不可能に思われます。

これまで長い間、片時もお世話にならないときはなく、この先もお世話になり続ける“おてて”に
そっと感謝の言葉をかけてください。