一組のカップルの間に一人の子供が生まれる確率ではなく、“我が父と母の間に「自分」が生まれる
確率はどれほどか?”を考えて見られた方がおありでしょうか。
現在の地球上の人口でみれば、一人の存在価値は“73億分の1”ですが、ある固有の人格が特定
のカップルから生まれる確率は、医学的に単純に計算しただけでも実に“50~80兆分の1”です。
ここには両親の出逢う確率は入っていませんし、採用する条件の選定や個人の生殖能力の差を考慮
すると、分母はさらに何桁も大きくなり“京”あるいは“垓”の単位になります。
そして、両親が望んだ子供がこの自分であったかどうかは知る由もありません。浅慮な人間が侵す
べからざる神様の領域であります。計算方法は別の機会に譲るとして、例外なくすべての人がこれ
だけ希少価値の高い存在であることを考えると、例えこの世でハンディキャップと見做されている
外見を持って生まれてきた人格も、必ず固有の使命を与えられているはずであり、かつて某首相が
「人の命は地球よりも重い」と言った言葉が素直に受け入れられるでしょう。
しかるに、地球上では現在100か所を超える地域に人種や宗教間の紛争があり、文明の発達に伴う日
々の事故、さらに飢餓によるものを合わせると健常な状態での死者はおびただしい数にのぼります。
また、昨今は国内外ともに人命を軽視する風潮が強まった感があり、大気汚染や温暖化の結果とし
て、現在の人口はすでに地球の食糧生産能力を超えていて、人為的殺人もグローバルには人心の荒
廃による自然現象なのでしょうか。
地球全体としては、現在も年間8千万人の増加ですが、先進国では少子高齢化で人口が減少する時代
に入っています。かような現状を鑑みれば、一人一人が否応なしに自分の存在意義を問い直す必要に
迫られているように思われます。
しかし、何と言っても前述のように天文学的確率でこの世に生存を許されたのですから、私どもは大
いに自己主張をし、短い人生を謳歌しつつ、社会にささやかな感謝の意思表示ができればよろしいの
ではないでしょうか。
(平成23年5月の小欄を時流に合わせて修正・加筆しました)
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